手軽な心臓CTへの道のり

心臓CTについての云々かんぬん、研究会報告等を自由気ままにしていきたいと思います

心臓CTのハーフ再構成について

本当は理論的に順番を考えて始めようとも思ったが思いつきで設立し、ノープランで進めたブログのため、あまり難しいことは考えずその時その時に書きたいことを書いていこうと思う。

 

心臓CTを難しいと感じる理由は様々で、「アーチファクトの出ない撮り方が分からない」、「アーチファクトが出た時に改善方法が分からない」、「改善させたくてもどこまでやれば良いか分からない」などがある。

 

今日はこの「アーチファクトが出ない撮り方」について書いてみようと思う。

(長くなりすぎたら複数回に分けるかもしれません)

 

まず心臓CTの再構成についてある程度理解しないと話が進まないのでそこから。

結構端折る(&間違えている)かも知れないので詳しいことはテキスト等をご参照ください。

 

テキストに書いてあるが心臓CTにはハーフ再構成とセグメント再構成という2種類の再構成方法がある(メーカーによって用語が違うが)。

 

まずハーフ再構成。

その名前の通り一回転する管球の半回転分のデータを使って画像を再構成する方法。

※本当は「プラスファン角」ですが、説明しやすい様に半回転分のデータとして話を進めます。

 

分かりやすくするために400msecで管球が一回転する装置を仮定します。

つまり半回転は200msecなのでこの200msecがカメラで言うシャッタースピードになる。

カメラのシャッタースピードは短いほど動きの早いものが撮影できる(多分)。

逆にシャッターを長い時間開いたままだとブレた写真になったり、またはそれを応用して星や花火をキレイに撮影したりができる(これも多分)。

 

このブレがCTで言うアーチファクトである。

なぜブレルかというとシャッターが開いてる(データ収集の)間に被写体が動くためである。

つまり半回転200msecの装置であれば、心臓が200msec静止している時間があればアーチファクトのない画像を得られることになる。

 

ではこの「心臓が静止している時間」というのはいつなのか。

これもテキストを見れば書いてあるが「拡張中期」という心位相である。

この拡張中期は左室容積曲線(ググってみて下さい)でいう緩徐(緩速)流入期という場所であり、心電図でいうと「P波の直前」と覚えていればほぼ間違いはない。

 

心臓は収縮(体に血液を送り出す)→拡張(左心室へ血液充満)を繰り返すが、拡張しながら左心室に血液を充満させ、左心室が血液でいっぱいになるとそれ以上左心室が広がらないので心臓の動きが止まる。

この左心室が満たされた状態が200msec以上あればブレのない画像を得ることができる。

 

ではこの緩徐流入期が200msec以上あるかの確認はどうすれば良いのか。

これに関しては高瀬クリニック佐野らによって論文が出されており

Slow Filling=-443+0.742(RR-PQ)・・・95% Predictionの式

という式で(大まかに)求めることができる。

(※Slow Fillingというのが緩徐流入期msecとなる)

 

「RR-PQ」というのはそのままRR時間、PQ時間であり、式を見れば「RR時間が長いほど(心拍数が遅いほど)」「PQ時間が短いほど」緩徐流入期は長くなることが分かる。

 

実際の値を用いて例を挙げる。

心拍数60bpm、PQ時間160msecの時の緩徐流入期は何msecか?

(PQ時間は心電図のマスを数えて下さい)

 

心拍数60bpmというのはRR時間に換算すると「60000/60=1000msec」。

(一分間に60回拍動するので1000msecですね)

※ちなみに心拍数とRR時間の換算は60000を除してやれば換算できます。

 (RR時間=60000/心拍数、心拍数=60000/RR時間)

 

式に代入すると

SF=-443+0.742(RR-PQ)=-443+0.742(1000-160)=-443+0.742(RR-PQ)=-443+623.28

  =180.28msec

となります。

 

つまり心拍数60bpm、PQ時間160msecの場合ハーフ再構成ではアーチファクトが出る(可能性がある)という結論になります。

※「可能性がある」という言い回しやその時の撮影法はまた後で説明する予定です。

 

では心拍数58bpm、PQ160では?

SF=-443+0.742(60000/55-160)=205.9msecとなるのでこの心拍数とPQ時間ならハーフ再構成でアーチファクトのない画像を得ることができる(はず)。

 

このことから一回転400msecのCT装置なら(正常な人のPQ時間はだいたい160msecなので)撮影前に心拍数58msec以下に心拍数コントロールが必要、と言うことになる。

 

この緩徐流入期の計算式はエクセルなどで心拍数、PQ時間を入力すれば算出される様にしておけばすぐに求めることができますので是非。

 

ここまで長々と話してきましたが今回話したこの半回転プラスファン角というのが「時間分解能」になる(あくまで一回転400msecで管球が回る装置で心臓CTをハーフ再構成で行った時の時間分解能です)。

なので心臓CTを行う時には自分の使用している装置の時間分解能を把握し(メーカーに聞けば教えてもらえます)、それ以上の緩徐流入期が得られるように心拍数をβブロッカーでコントロールするということをすればほぼ失敗はないと思います。

※施設によってβブロッカーを使用しないなどの事情がある場合については後日書こうと思います。

 

極端なことを言ってしまえば、緩徐流入期が時間分解能よりも長ければどんな撮り方をしても失敗しません。

心臓CTで心拍数コントロールが大切というのはこんな理由からなんです。

補足などあればまた後日書きたいと思います。

 

【ハーフ再構成のまとめ】

・装置の時間分解能(半回転プラスファン角)msecを把握する。

・被検者の心拍数、PQ時間を把握し、緩徐流入期を計算する。

・時間分解能<緩徐流入期になるように心拍数コントロールをする。

・時間分解能>緩徐流入期であればセグメント再構成を行う(←後日)。