心臓のセグメント再構成について
前回のハーフ再構成に引き続きセグメント再構成について。
多分画像やグラフのない記事なので分かりづらいとは思いますが、ブログ自体に慣れてきたらそんなオシャンティな感じにも挑戦したいと思います。
半回転プラスファン角のデータを使うハーフ再構成に対して複数心拍のデータを使用して1スライスを再構成する方法をセグメント再構成と言う。
テキスト等で目にしたことがあるとは思うが、実際にどんな再構成をしているのかは分かっていない方も多い気がする。
(私も3年くらい間違った知識で覚えていました)
ハーフ再構成での説明にて200msec以上の緩徐流入期がある心拍数(&PQ時間)で撮影することでアーチファクトのない画像が得られると説明した(前回例に挙げたスペックの装置だとして。以下も一回転400msecの装置として説明します)。
つまり、前回のまとめであった様に「時間分解能<緩徐流入期msec」で撮影することがキレイな画像を得ることの大前提である。
ではどうしても心拍数が早く「時間分解能<緩徐流入期msec」とならない場合にはどうするれば良いか。
その時に行う再構成方法が今回の「セグメント再構成」である。
これは1心拍で200msecの静止位相が得られないなら複数心拍から半回転分のデータを得ようとする再構成方法である。
その名前の通り半回転分のデータを「分割(セグメント)する」再構成である。
心臓CTは小さいPitchで撮影するため、X線束のオーバーラップにより1スライスにかかる心拍数は複数ある。
メーカーやPitchによって違うが、例えば1スライスに4心拍のデータがかかっているとする。
すると、単純計算で200/4msecとなり、1心拍あたり50msec心臓が止まっていれば半回転分のデータを得られることになる(実際にはこううまくはいかないが)。
なので60bpm以上(時間分解能>緩徐流入期)でも拡張中期再構成でアーチファクトのない画像が得られることがあるのは、このセグメント再構成を行っているためである。
(意図してセグメント再構成を選ぶか装置が勝手にやってくれるかは別として)
ただしセグメント再構成を行っても拡張中期再構成でアーチファクトが出てしまうことがある(理由についてはまた後ほど)。
この時に用いるのが拡張中期再構成ではなく、「収縮末期再構成」である。
この収縮末期とは心臓が体に血液を送り出しきった時に「左室はこれ以上しぼみませんよー」という時に心臓がちょっと止まる位相。
どのくらいちょっとかというと(文献によるが)100〜50msec以下と言われている。
収縮末期再構成を行う場合は心拍数が高いことが多いため、絶対的に1スライスあたりの心拍のオーバーラップは多くなる。
なので、ある1スライスを作ろうとした時、50msecの静止位相でも4心拍分くらいよせ集めればアーチファクトのない画像を得られることができたりする、ということである。
【セグメント再構成の時間分解能は??】
ちょっと長くなりそうだが関連するところなので…。
ハーフ再構成の時間分解能は何度も書いたように「半回転プラスファン角msec」である(メーカーによって表記が違うこともあるが)。
これは「1スライスに対して1心拍」という前提があるため固定であり、ハーフ再構成で時間分解能を左右する因子は管球回転速度のみである。
これに対し、セグメント再構成の時間分解能は、「1スライスに対して◯◯心拍」という変数(?)があるため、複雑になり、さらにPitchも影響する。
Pitchが大きければ1スライスにかかる心拍は少なくなり時間分解能は悪くなり、Pitchが小さければ1スライスにかかる心拍は多くなるため時間分解能は良くなる。
分かりづらい言い回しになるがセグメント再構成の時間分解能は「あるPitchで撮影した時に 1スライスにかかる複数心拍から半回転分のデータを得るために 1心拍内で心臓が止まっていなければならない時間」ということです。
本当に長い上に分かりづらいですね…。
おそらくこれは計算で求まると思うのですが自分にはそこまでの知識がないので時間分解能曲線を見て見るのが一番早いです。
メーカーに「時間分解能曲線ください」と言えばデータをくれるはずなのでねだってみるといいと思います。
時間分解能曲線を見てみるとのこぎり型になっていると思うが、最小はまちまちだが最大(もっとも悪いところ)はハーフ再構成の時間分解能と同じになるはずです。
「複数心拍使ってるのになんでハーフ再構成と同じ?」
この原因は何か。
それは「Resonance Case」と呼ばれるものです。
Resonance=共鳴、共振 です。
何と何が共振してしまうCaseなのか。
「管球回転速度」と「心拍動」です。
つまり、管球の回転と、心臓の拍動が同じ周期で動いてしまうとセグメント再構成をしてもハーフ再構成分の時間分解能にしかなりません。
どういうことか。
緩徐流入期が100msecしかない症例において、拡張中期でセグメント再構成をするために1スライスに2心拍オーバーラップするPitchで撮影したとする。
半回転分(200msec)データを前半(1~100msec)・後半(101〜200msec)に分割し、それぞれ1心拍目、2心拍目から持ってきたい。
管球回転が0°の位置からスタートするなら、1心拍目は0°〜90°、2心拍目は91°〜180°の位置に管球があるときにそれぞれの緩徐流入期が来ていれば「時間分解能100msec」で撮影が可能となる。
ただし、管球と拍動が同じ周期で動いてしまうと、1心拍目も2心拍目も管球が0°〜90°に位置するときに緩徐流入期がきてしまうため1〜100msecの静止データしか得ることができず、半回転分のデータは得られない、ということになる。
結果的に同じ管球位置のデータしか得ることができていないため、分割された半回転分のデータを得ることができずにアーチファクトが出現する、ということになる。
(1心拍あたりの緩徐流入期100msecは、1・2心拍分ともに0°〜90°のデータへ入ってしまい、残りの91°〜180°は動いている心臓のデータが入ってしまう)
ということで2心拍分オーバーラップさせるようなPitchで撮影したのに、意味がなかったーというのがResonance Caseと呼ばれるものです。
逆にうまく管球回転速度と心拍動がずれて複数心拍から半回転分のデータを埋めてくれれば、良好な時間分解能で撮影できる、という事になります。
このことから分かるようにセグメント再構成で心臓CTを撮影するにあたって、管球回転速度が早ければ良いというものではない、ということが分かる。
…疲れてしまったので今日はこの辺で。
見直して補足などあれば後日追記いたします。